3年前にフィリピンで昏睡強盗に遭ったことのメモ

ネットで同様事例があまりにヒットするので
ネットにメモしておく。
各自が事例を挙げて被害を防止するしかない。
自分も迂闊すぎた。反省。

自分の場合は、2014年1月12日に、マニラのマラテ教会で遭遇した。
教会で結婚式をやっていたのでぼーっと見ていると
典型例なのだが、50歳くらいの男が近づいてきた。
その日セブの語学学校に行く予定だったのでそう告げると、
その男もセブ出身だと言う。

話していると、50歳くらいの自称嫁が現れる。会話に参加してきた。
この流れも典型。
SM Mall of Asia に行くと言うと、
一緒に酒を飲みにいこうと言う。
迷ったのだが食事することにした。
今思えば、外国人と交流したかったのだろうな。

しばらく歩いたところで20代くらいの男が合流。
いとこだったかなんか。
そのうち30代の女2人くらいが合流。うち1人は自称学校の教師だとか。
計5人に囲まれる状況。

ジプニーを案内してくれ、乗り込む。
さあどうしようと考える。
ジプニーは本当にモール行きか?
土地勘が無いので解らない。
しばらく乗っているとモール行きは本当だと判った。

SMのどこかのレストランに到着。チキンの店みたいな感じ。
屋外の席でパーティーっぽく食事。
正直、年齢も上の人ばかりであまりおもしろくない。
セブの話など。

20代の男がやけに気を使って話しかけてくる。
聞き取りにくい英語だ。
帰り際、自分が金を出すと申し入れ。500ペソか1000ペソ。
一同の目の色が変わったのを感じる。

この後カラオケに行かないか?と誘われる。
さあどうしよう。
ここで考えた。

自分には、初海外だったフィリピンでの目標があった。
貧困を目の当たりにしたかったのだ。
実際、その後の滞在期間も貧困を知ることが大きなテーマだった。
一度は騙されるくらい別にいいじゃないか。と。
騙されることを貧困の中で経験しないと、
教育というテーマにある壁を超えられないとか、本気で考えていた。

彼らの本音を知ってみたい。
じゃあどこで線引をするか?
殺されなければいい、これで行くことにした。

で、たしかタクシーでEDSA方面に向かい、道路に面したカラオケ店に到着。
ボロいローカルな場所で嬉しくなっていた。
土の地面で窓もない、プラの椅子が並んだボロいバーだった。
猫が居たので触ろうとすると、
20代の男が物凄い勢いで手を掴んで引っ込めさせられた。
猫にひっかかれると病気とかでヤバいのだろうか。
確かに途上国の動物はヤバい。
こういうところも無知だった。

ここで酒が出てきて、2曲ほど歌った所で意識を失う。
酒は全然飲めないのでほんの少し口をつけたくらい。
景色の記憶はハッキリとある。
だが意識を失ったのは一瞬だった。

気がつけば、セブのマクタン空港で車椅子に座っていた。
マクタン空港へは飛行機に乗らないと辿り着けないはず。
どういうことだ?
飛行機に乗ったのか?
しかも外が明るい。昼だ。おかしい。到着予定は夜だぞ??
13日?日付?が?変わっている?
飛行機のレシートが残っている。
今日13日の朝に搭乗している。
自分がネットで予約した12日夜の便じゃない??
というか、マニラにいたはず?記憶がない?
この車椅子は何?

なんと、よく解らないが、無意識で行動していたのだ。
無意識でマニラの空港まで行って、
無意識で飛行機を予約(自分か?犯人か?)して、
無意識で搭乗していたらしい。
ほんとか?犯人が乗せた?
金は誰が払った?解らない。
所持金はなし。現金全部取られていた。
他のものは?傘と上着だけ無くなっていた。
盗られたか落としたか?
パソコン、スマホ、パスポート、クレカ全部無事。
額に打ったようなキズが残っている。転倒したのか?
???

その後、空港のwifiでかろうじてエージェントと連絡がとれ、
ものすごい吐き気と共に語学学校に到着。
タクシー代を建て替えてもらう。
同時にロビーで吐いた。
notoriousな(悪名高い)生徒とキャラ付けされたのは言うまでもない。
その後1日寝ていた。翌日からやっと体調復帰。

後で空白の時間の記憶が2つ蘇る。
1つは、暗い場所でリュックと共に座っている記憶。
2つは、こちらはハッキリしているのだが、
ATMの前で彼らに囲まれて金を引き出そうとしている場面。
なんと、驚くべきは、カードを入れて
銀行の実際の暗証番号を入力していたのだ(!)。
その記憶が残っている。
操られていたのか?
幸い、持っていたカードは全てキャッシングできないものだった。
10%ぐらい抵抗心があったようで、
エラー画面の後、ATMにわざと殴りかかった。
彼らに協力姿勢を見せると同時に、
警察を呼べるかと思ったのだ。
そこの思考はハッキリ覚えている。
殴りかかる手を、瞬時に全員に制止されるあたりで
再び記憶が途切れている。

後日カード会社に問い合わせると、
引き出そうとした履歴が複数回残っていた。

色々と無知だった。
でもいい経験になった。
乱暴な考えかもしれないが、貧困とはこういうものだと思う。
しかし昏睡強盗の結果、何があるか解らない。
多分殺されはしないが、事故死する可能性は十分にある。

酒に少し口を付けただけでこうなる。
つまり、特に外国では知らない人と交流するのはこういうことなのだ。
信頼の根底が崩れるようで残念だが。

自分は慈善心をこじらせている。
この事件後も偶然道で出会ったフィリピン人の家に行ったりした。
別の場所では、同じようにいきなり出された酒を飲んだこともあった。
現地民しかいない貧困地域を毎日のように歩きまわった。
殺されなければいい、というおかしな線引で。

慈善心をこじらせておかしくなった人は多い。
大学のボランティアサークルでもたくさん見た。
自分もその典型だ。
特にそういう人達に気をつけてほしい。
ただ、ある種のイノセントさが消えて
人生のある種の重要なマターが総括できた感もある。