教採結果の事前通知問題
(試験本体での不正は→こちら)
2008年の教採不正問題に併せて発覚し、
急に話題が消えた話がある。
大量の自治体が、合否結果を事前通知をしていたという問題。
点数の水増しではなく、合否の事前通知である。
通知先は議員、教委OB、教員OBなど。
これはなかなか闇が深いのだが、
不正ではないのでオッケー、でも疑われるので今後やめるわ、
みたいな対応で通ってしまい、話題は消えた。
軽微な行政処分はあったようだ。
2008年07月25日 朝日新聞朝刊
(×は受験者に合否が伝わる前に照会した人物に連絡。△は発表後、連絡したり照会に応じたりした。○は「そうした連絡は一切していない」。?は調査中)
北海道 ×
青森 ?
岩手 △
宮城 ×
秋田 ×
山形 ×
福島 △
茨城 △
栃木 ○
群馬 △
埼玉 ×
千葉 △
東京 ?
神奈川 △
新潟 ×
富山 △
石川 ?
福井 ×
山梨 ×
長野 ×
岐阜 △
静岡 ○
愛知 ○
三重 △
滋賀 ○
京都 ○
大阪 ○
兵庫 ○
奈良 △
和歌山 ×
鳥取 ○
島根 ×
岡山 ×
広島 ×
山口 ○
徳島 ○
香川 △
愛媛 △
高知 △
福岡 △
佐賀 △
長崎 ○
熊本 ×
大分 ×
宮崎 ×
鹿児島 ×
沖縄 ○
【指定市】
札幌 ○
仙台 ×
さいたま ○
千葉 ○
横浜 ○
川崎 ○
新潟 ○
静岡 ○
浜松 ○
名古屋 ×
京都 △
大阪 ×
堺 ○
神戸 ○
広島 ○
北九州 ×
福岡 ○
かなり多い。
なぜ事前通知などと言うことをするのか?
理由は以下。
採用自体への影響を認めた教委はない。ではなぜ、議員たちは事前に結果を知りたがるのか。
仙台市のベテラン市議は「事前に知ることで手を尽くしたとアピールできる」と話す。山梨県の県議は「先に情報を得て支持者に知らせるだけなのに『自分が先生にしてやった』と吹聴している議員がいる」と話す。
「汗をかいてみましょう」。支持者に力添えを依頼されると、岡山市の保守系市議はそう応じている。知り合いの県議や県職員を通じて、本人への通知前に合否を聞き出す。「働きかけが無理でも、本人に結果が届く前に『だめでした』『受かってますよ』などと連絡できれば議員としては格好がつく」
改ざんだと違法なので、法に抵触しないやり方ということだろう。
これなら法的リスクをヘッジしつつ、恩を着せることができる。
個人的に問題だと思った点をいくつか。
・多くの人々が不正を依頼してきたという事実
報道によると、熊本や北海道では
1年で100件もの事前通知が行われたようだ。
全国では、毎年1000件近く事前通知があったのだろうか。
同時期にその他公務員、国家試験等でも事前通知問題は発覚したので、
全体を含めると、毎年何千という単位、またはそれ以上の人が
不正依頼してきたのかもしれない。
それが日本の姿なのだ。
・多くの人々が依頼を一定承諾してきた事実
議員など、承諾した側が沢山いる。
99%は口を閉ざしたまま社会の中で今も生きていることになる。
・教委の組織的加担
北海道教委は、教育長の決裁が終わった後、受験者に発送する作業と並行して、国会議員秘書や道議、首長らに電話で回答していた。教育長以下、部局長、課長級も電話し、全体で100件単位にのぼるとみている。
一部の自治体では、複数の教委関係者が総出で電話しまくったみたいだ。
100件とかになってくるとそりゃそうだ。
1人、2人じゃ連絡作業が追いつかない。
組織ぐるみでえらいさんに一斉電話である。
・グレースキームの共有
複数の記事から察するに、80年代から始まったケースが多いようだ。
似たような方式があちこちで見受けられることから、
人等を介してスキームがコピーされ共有されていったのが解る。
Nスペなんか逆アセンブル得意だから調査してみてくれんかな。
・ほぼ罰則無し
現職の教委関係者あたりが軽い行政処分を受けただけで、
この話題は終わった。しっぽ切りである。
本体の大分教採汚職という大問題の陰が効いたか。
・沢山の不正教員に教えられて皆育ってきた
グレーな、またはブラックな先生に教えられて、
皆育ったということだ。
大分の教採不正でも遡及しての調査については極めて甘かった。
社会というのは、それで制度がワークしてきたという
どうしようもない現実がある。
教採には裏口の要請というか、
裏口文化があったのだろうと予想する。
依頼件数の多さを見るに、個人的動機、個人的行動とはいい難い。
文化とは、世代間で受け継がれるものだ。
自治体によって差はあるようだが、
(08年から数えて)約20年前から始まったという
関係者の証言がいくつか出ている。
シナリオを予想すると、社会が高度化する80年代
裏口はやはり存在していたが、
こりゃいかんということで関係者が知恵を絞り、
違法性無くwin-winに装うことが可能な折衷案を開発、
よほどの権力者の子女で無い限りはこれを適用していきましょう、
となったのかな。
で、各自治体の教委関係者に連絡してしゃーなしに教委が飲み、
裏処理として引き継がれていった、ということだと予想する。
報道では、関係者が口を揃えて賄賂は一切なかったので問題ではない、
と語っているが、件数から考えてオールホワイトなどありえるだろうか。